持続的成長するための営業組織マネージメントフレームワーク~第一章:なぜ、営業組織は結果を出せないのか~ 1. 営業マネージャーに求められるリーダーシップとは

前回、営業組織マネージメントに欠かせない3つとは何かを書きました。
この3つが欠かせないと考えている理由を複数回に分けて書きたいと思います。
第1回は、「営業マネージャーに求められるリーダーシップとは」です。
営業マネージャーはリーダーシップを意識していると思います。それは売上目標を達成させるというプレッシャー高い業務をリードするためには必要なことだからです。しかしリーダーシップを発揮できていないマネージャーが多いと感じています。それは何故なのか、紐解いてみたいと思います。

トップセールスが営業マネージャーになるとは

これを読まれている多くは日本企業で営業を行っている方だと思います。
多くの営業組織のマネージャーは、その企業のトップセールスがなっているのが実情ではないでしょうか。

トップセールスとして実績をあげてきたセールスは一目置かれ、チームメンバーに受け入れられやすい、それが理由です。

上司からも部下からも担当営業の時に売り上げをほとんど上げることができなかった人がマネージャーとなり、個人でできなかったことをチームマネージメントでできるとは思えない、自然な考えです。

そのためマネージャーの有力候補はトップセールスであるかどうかで判断され、その上で企業文化や風土への適合力や指導力などを評価し、プロモーションされています。

トップセールスのノウハウだけでは営業組織はマネージメントできない

このようなプロモーション方法になることのもう一つは、リーダーの能力を組織が越えることはできないと考えられているからです。
どうすれば新規顧客を開拓できるのか、既存顧客から新しい商談を見つけ成約するために実行することは何か、このようなノウハウを身に着けていない人がリーダーとなり組織をマネージメントしたとしたら、その組織は望む結果を出すことはできません。

ではトップセールスから候補を選出しマネージメントを行ってもらえば、営業組織が成功する確率は上がるのでしょうか?
もしそうであるのであれば、ほとんどの営業組織が売り上げ目標を達成しており、ほとんどの企業の業績が成長していると思います。しかし現実は、対前年比でマイナス成長になっている企業がほとんどです。

このことからトップセールスとしてのノウハウを持っていることが必要条件ではあるが絶対条件ではないと言えます。
ノウハウを持っているとは、営業として必要なスキル、テクニック、熱意、態度、気持ちを持っていることであり、これらを組織に教え、一人一人の担当者の能力をアップすることはできるかもしれません。しかしこれだけでは持続的成長を可能にする営業組織にはできないため、前回の3つが必要となります。

会社がトップセールスの営業マネージャーに期待することとは何か?

実はトップセールスをマネージャーにするのは、ノウハウを活かしてもらいたいだけではなく、営業組織の変革を期待しています。変化する外部内部環境に対応できる営業組織にするためには、変革が必要であると考えているからです。

その変革のためには、営業活動という行動を変革する必要があります。ソリューション営業やコンサルタント営業に変わる、このような行動変革をマネージャーのリーダーシップで期待しているのです。

行動変革を起こさせるためには

人の行動が変革されるのは、
意識変革⇒行動変革⇒能力変革⇒習慣化
この順番で行われます。

マネージャーもトップセールスであった時、自分自身の営業目標達成するために何をする必要があるのか、先輩の背中や顧客の言葉などから「顧客に価値を感じてもらうために必要なこととは、このようなことではないか」、「顧客が購買を決断するためには最低限、このことができている必要がある」など、意識するものがあったと思います。
意識することで今度は行動が変革していきます。

意識とはある意味、ある目標を達成するための目的を認識することになります。目標達成するための目的を認識し、そのために必要な行動とは何かを考え、その考えを実行し、成功や失敗の経験から行動変革を起こします。

そして行動をより生産的、効率的に実行するために必要なスキルとは何かを考え、そのスキルを身に着けることで能力変革を起こし、次第に習慣化していきます。習慣化すると意識しなくても実行できるようになります。

ベテランの営業が適切な質問を投げかけて顧客ニーズを引き出すなどは、習慣化されているから可能になっているのです。

マネージャーに期待しているものの一つは、意識変革を起こさせること

この一連の流れをトップセールスは実行し、成功した体験を持っています。このような変革を営業組織に起こさせ、環境変化に強い営業組織にしてもらいたいと考えているからトップセールスをマネージャーに置くのです。

しかしマネージャーになると自分自身が習慣化しているノウハウや技術を伝える、意識を持たせずにこうすればうまくいく、こうする必要があるといった行動を変えさせることから始めるため、思っているような変革が起こせません。

  • 初回訪問で取るべき顧客の情報が少なすぎる。会社や商品の紹介よりも顧客のことを聴くようにいつも言っているよね。
  • 課題認識が弱すぎる。先日トレーニングした質問法を駆使してもっと、課題の深掘りをしないと競合に勝てないぞ。
  • なんでまだ、部長に会えないのだ。私も同行するから部長とのアポを早急に取りなさい。
  • こんな提案ではうちは採用されないぞ。課題を引き出すためにヒアリングした内容から仮説をぶつけて引き出すようにトレーニングしたよね。それはやったのか。

マネージャーが必要だと考える意識することは何か、そのための行動をトレーニングで教えても十分な行動を起こしてもらえない、続かないといったことが起こります。

リーダーが組織を導く、すなわちリーダーの進む方向に組織は進む

これは意識させるべき行動に必要な理由が、理解されていないからでしょうか。
顧客の課題を知る理由、質問法を活用する理由、部長に会う理由、その理由を意識させれば行動してもらえるのでしょうか?
多分、今回は行動するが同じ事が起きることは予測できると思います。

組織が抱える個々の課題を解決するために行動変革をさせるためには、組織の大きな意識を変革しなければできません。営業という仕事とは何か、そのために顧客に提供する価値は何かなどを一人一人が考え行動する、そのような意識がないことがそもそもの原因です。
それは行動を起こす理由や論理ではなく、気持ちや精神の部分になります。

逆にこうしたものを持っている組織でなければマネージャーはリーダーシップを発揮できないのではないでしょうか。もっと数字をあげたい、顧客から信頼できる営業として認められたいなど、営業が喜びを感じるものを持っていない組織にリーダーシップを発揮しても目標は達成できないことも予測でき、リーダーシップを発揮することが難しいことも理解できるのではないでしょうか。

マネージャーはリーダーシップを発揮して組織の意識を変える。

マネージャーが組織を導くとは、マネージャーの考える営業という仕事に対する強い想いや譲れないことを組織に意識させ続け意識させることです。トップセールスの時に持っていた営業という仕事に対する意識、それを組織に意識として持ってもらうためのリーダーシップが求められており、そのような組織に導くことを会社に期待されています。
しかしリーダーシップを発揮できていないマネージャーが多いのが実情です。

特に今のような危機下にある状況では、困難に立ち向かうためのリーダーシップを発揮できるマネージャーになることが必要ではないでしょうか。

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