経営者が考える課題の第8回目は、顧客満足度の向上です。
サブスクリプションモデルによる定期購入や従量課金が増えてきたことで、最近ではカスタマーサクセス部門を作り、顧客満足度向上に力を入れている企業も多いかと思います。
長期関係を維持し長期取引を実現するために必要な顧客満足度向上ですが、あらゆる組織を巻き込み、全社的に取り組むことがセオリーとなっています。
全社的な取り組みを考察するのが本来ですが、弊社のサービスは法人営業であるため、法人営業として顧客満足度向上にどのように取り組めばよいのかを考えてみたいと思います。
顧客満足度というと商品・サービスを納入し、使用され始めてからのフォローが影響するものと思われていますが、実は取引時の状況が大きく影響することを意識していない経営者や営業が多くいると思います。
では取引時の影響とはどういうことなのでしょうか。
取引には自社と顧客とで感じる4つの満足があります。
相互満足、自己満足、先方満足、相互不満足です。
法人営業では、取引を承認する役員、選定にかかわる部門や担当者など多くの人が関係します。そしてこれら全ての人たちが満足し、自社も満足している相互満足が理想的な取引です。
しかし営業という職種は、個人に結果が完全に紐付いているため、どうしても売上のために強引に進めてしまう傾向があります。
例えばよくあるのが、早く成約をしたいがために反対意見者に理解してもらう活動を行わず、反対意見を潰す動きをして成約をする自己満足型。
あるいは順調に営業を進めてきて、最後の契約になって調達部門から無理難題の値引き交渉が行われ、泣く泣く値引きをして成約する先方満足型。
このようなことが起こっていないでしょうか。
しかしこのような取引を行うと不満足を感じている側は必ず復讐します。
先ほどの自己満足型の例では、潰された担当者は導入後に使い勝手やサービスなどについてネガティブな情報を社内で展開されてしまい、その対応に営業が追われるような事態が起こりえます。
あるいは追加の商談が出た時もマイナスイメージを訴求したり、商談に影響ある人へのネガティブな情報をインプットすることで他社へ誘導する活動を行う場合もあります。
同様に先方満足型では、担当営業が嫌な思いをしたことから対応がおろそかになり、結果、顧客内でアフターフォローが悪いという評判が立ってしまうことが起こりえます。
このような動きに経営者としては不満を感じるかと思いますが、営業も人であるため無意識であったとしても顧客ごとに対応が変わってしまいます。
そして売上だけを優先させるオペレーションを行ってしまうと相互満足型の取引が減少し、顧客満足度が落ちていきます。
これを回避するためには、営業管理者による中立で客観的な商談の見極めが必要だと考えます。
商談の状況を確認し、顧客と担当営業の心理状態を見極め、管理者が責任を取る形で顧客対応を指示することが必要になります。
特に大切になるのが顧客からの反論を潰さない、これを営業組織内で徹底することが必要です。反論潰されると自分の意見を無視されたと考え、それ以降、敵対者化していきます。それを避けるためにも反論をまずは受け入れ、対応を考えることが必要です。
これをオブジェクションハンドリングと言います。
また顧客からの無理難題については、商談をストップする勇気も必要です。無理な成約は将来的には双方の不幸につながります。
このストップする決断は担当営業ではなく、営業管理者が冷静に判断することが必要です。
営業というものは売上という目標を背負っているため、どうしても商談がある、あるいは商談の可能性がないと顧客とコンタクトを取りません。
そのことによりどうしても既存顧客への訪問が少なくなりがちです。
売ったら売ったきりで商談があるとコンタクトを取るといった活動では、顧客満足度は向上しないどころか、新たな商談をロストする危険を作ってしまいます。
そのためカスタマーサクセス部門などを設け、定期的にコンタクトを行い、情報提供などにより接点をし続けることで顧客満足を維持あるいは向上する動きを行っている企業もあります。
しかし大企業であれば分業体制を引いていくことも可能かもしれませんが、多くの企業では費用対効果の関係で難しいのが現状だと思います。
では商談がない顧客にどのようにして営業にコンタクトさせ続けるかですが、気づき情報を確認するための訪問と気づき情報を収集するための訪問といった、訪問目的を作ることです。
この目的を作るためには営業組織内で顧客の気づき情報を得て、それを活用する、それが営業の重要な活動の一つであることを認知する必要があります。
営業という職種は売上を作るために顧客との関係、特に役職者との関係構築が重要になります。そして役職者が欲しいのは、ビジネスに役に立つちょっとした気づきです。そのような気づきが出てくると興味を示し、話を聞きたくなります。こうした気づき情報による会話を繰り返すと関係性が構築されてきます。
そのために必要な気づき情報をどのようにして仕入れるか、それは既存顧客から収集します。
自社の商品の使い勝手やビジネスでのメリット、改良を期待したいこととその理由など、部門や役職により様々な生の情報を仕入れられます。そして聞いたことを深掘りすることで気づき情報になるものが出てきます。
こうした情報は社内の製品開発にも活かせますが、顧客とのディスカッションに利用できる情報にもなります。
そして情報を組織内で共有すれば、他の営業の気づき情報を自分の既存顧客に確認することで、生きた情報に変換することが可能になります。
生きた情報とは、自分自身の顧客から聞いた生の声であり、それは自信が経験した情報に昇華されたことを指します。
聞いた情報が生きた情報になることで実体験として顧客に話ができるようになり、聞くほうも興味の示し方が変わることで意見がもらえるようになり、気づき情報のブラッシュアップが図れる循環を形成することができます。
自分の活動に役立つ情報を仕入れる、そのために既存顧客に訪問する、しかし聞くだけでは相手も情報を開示してくれないので、他で仕入れた気づきを与えることで関係を強化して仕入れていく。
このような活動が既存顧客に行われていれば、顧客の不満なども早期に話がしてもらえようになり顧客満足度も向上する、一石二鳥の仕組みが作られると思います。
顧客満足度とは何かを考えた場合、顧客が取引先にオープンに会話ができ、スピード高く対応してもらえているかに尽きるかと思います。
そして大切なことは、ただ単なる取引先という関係ではなく、繋がっていることにメリットを感じてもらえる関係構築ができていることだと考えます。この繋がっているとは担当営業だけでなく、企業としてつながっていると認識してもらえることが重要です。
そのために法人営業は売上だけではなく顧客との長期関係構築を作る、このようなミッションを持っています。
しかし長期関係構築を築くにあたり上司からの指示が、仲良くなれといった抽象的な言葉に置き換えられているケースが多いと思います。
そのような指示になると自分が話をしやすい人にしか行かず、偏った関係構築しか築けないのが実情ですし、今後の活動に活かせる情報も入手できません。
自らの活動と顧客への価値提供を行うために必要なこと、そして何より顧客が喜んでくれる活動に、既存顧客訪問を紐づけることが重要ですし、そのことを営業組織内で認知をさせることが大切です。
せっかく築き上げた顧客との関係を今後の営業活動にどのように活用するか、そのような視点を持ち既存顧客とコンタクトし続けることで、顧客満足度は向上するのではないでしょうか。