経営者が課題として感じていること第6回は、行くべき先、やるべきことの明確化です。
期初に報告された売上が、期末が近いのに大幅にショートしている。
月末には売上がたっていると報告がされていた商談が、いまだに成約していない。
このような時にに浮かぶのが、営業は行くべき先、やるべきことを理解し、優先順位をつけて活動しているのか?
無計画な動きによりチャンスを逃している、多くの経営者から営業がそのように見えてしまっているのではないでしょうか。
このような行動になるのは、決して無計画であることが原因ではありません。
無計画にならざるを得ない、背景があるのです。
なぜ、このような行動になってしまうのかを考えてみたいと思います。
導入部分にも書きましたが、マネージメントをしていると「なぜ、今、訪問して商談を前へ進めないのか?」「受注予定日が迫っているのに、まだ見積りも出していないのは、なぜなんだ?」
商談を進めるために行くところはこの顧客だよね、そしてやるべきことはこれだよねと、どうしても言いたくなるような時があります。
管理者は計画的に動いてもらいたいので、それぞれの営業と注力すべき商談ややるべきことを毎週、確認をしている。
それなのに日報が出てくるとやっている気配がない、
週末に提出されてきた週報にも活動した形跡がない。
あるいは、活動しているが期待した結果には程遠く、どうなっているんだと言いたくなる。
管理者を経験したら誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。
このようなことが続くと活動管理を厳しくし、そのことにより担当営業はモチベーションが下がりパフォーマンスが低下するという悪い流れができてしまいます。
では、なぜ、明確化できていないと見えるのでしょうか。
それは、営業担当者の多くが商談は顧客が進めるものと考えているからです。
どういうことかというと、
これは活動が受動的な営業の深層心理を表現しています。
このような考えを持っている営業は、会うあわないの判断も顧客判断と考え、訪問の約束を取ろうとしますが、顧客から「忙しい」などの返事をされるとあきらめてしまいます。
つまり明確化できていないのではなく、他に原因があるのです。
ではそのように行動してしまう原因は何でしょうか?
それは営業の仕事は、顧客の問題の解決や正しい判断のための情報提供ではなく、自社の商品・サービスを購入してもらうための活動、すなわち「自社商品・サービスを顧客が購入するように、購買プロセスをコントロールする」、この意識が欠如していることです。
購買プロセスをコントロールするとは、自分の考える契約内容(ソリューション、価格、納期など)、契約日時で成約を目指すことを指します。
コントロールする意識を持って活動すると、いつまでに何を実行し、必要な結果は何かを考えて行動します。そしてその行動は、行くべきところ、やるべきことの明確化になっているはずです。
ですが多くの営業組織は、購買プロセスをコントロールできると考えていませんし、方法も理論も持っていません。
部下「良い評価を得ていたのですが、競合が破格値を出してきて負けてしまいました。」
上司「そうか、それなら仕方がないな、うちはあれ以上の価格は出せないからな。」
部下「もう少し、値引きできれば何とかなるのですが、検討してもらえませんか。」
こういう会話をした経験はありませんか。
これは購買プロセスをコントロール意識が欠如している典型的な会話です。
それは、競合が破格値を出してくるかもしれないことは予想できることです。それが実行されても有利に運ぶためにどのような策を打つのか、誰に打つのか、コントロールしようとする営業組織は想定できるリスクについては対策を打ちます。
価格以上の価値をどのようにして訴求するか、コントロールしている営業組織が最も重視している営業活動です。
敗退理由で一番多いのが、価格です。
公共事業の入札案件でない限り顧客は価値があると判断すれば、価格が高くても成約してくれます。
価格による敗退とは、顧客が価格に見合った価値を感じてもらえなかったことによるもので、その価値を購買プロセスで認識してもらえるようにコントロールできなかったことによるものです。
理由は簡単です。
誰も教えていないし、コントロールするための戦略を持って活動している営業組織はほとんどありません。
ですので、持っていないのが当たり前なのです。
そしてもう一つあるのが、購買プロセスをコントロールすることを意識して営業をしてきた人が少ないこともあります。
これはプロセスコントロールを営業活動で全く実行していないと言っているのではなく、意識して活動していない人がほとんどであることを言っています。
できる営業は必ず、購買プロセスをコントロールすることを意識して、活動しています。だから売れるのです。
ですが無意識で実行しているため、暗黙知化してしまっています。ですから論理的な説明ができない、そうなると仕組み化することはほぼ不可能です。
そしてできる営業が後輩の教育を担当するのですが、暗黙知のものは引き継げません。そうなると後輩は、その技術を身に着けることができなくなり、表面上の営業プロセスを学ぶだけになってしまいます。
フィールドセールスにとって最も重要である「購買プロセスをコントロールし、自社の望む成約を達成する戦略」、この戦略をほとんどの営業組織が組み込めていない理由は、優秀な営業が持っていた暗黙知を形式知化して、戦略に組み込めなかったことが原因です。
このような仕組みを早く組織に取り入れたいと考えるのであれば、外部コンサルティングを活用することをお勧めします。
それも外資で実行経験を持っているコンサルタントが良いと思います。
なぜならば外資系は、購買プロセスコントロールのための理論を長年実践し、仕組み化してきています。そのノウハウを吸収するのです。
どうしても外部を活用したくないということであれば、自社のトップ営業と営業管理者とで購買プロセスをコントロールするためにはという議題でブレインストーミングをしてみることです。
フィールドセールスはこれから先、顧客訪問を限定され、多くの活動がリモートに置き換えられます。
そのような時代に生き残れるフィールドセールスは、顧客の購買をコントロールできることです。
リモートで商談できるということは、リアルの面談よりも敷居が下がります。
敷居が下がるからいつでも会えるようになると考える営業は凡人です。
顧客側のいつでも会えるは、自分が会いたいと思うときに会えばいいという考えを益々、強めます。
敷居が下がるとは、自分が本当に会いたいときに会えばいいという考えを加速させ、ちょっとしたことでは会わなくてもよい、会うためにはそれが例えリモート面談で会っても本当に必要な時のみになるということです。
訪問してくれるのであればちょっと話を聞こうかというものが変わります。
資料を持っていきます、サンプルを持参しますといった訪問の理由も活用できません。送っておいての一言で終わります。
できる限りの非対面という常識が後押しするからです。
これからの環境の中で顧客の考えに追従する営業は、まったく売れなくなります。
そして売れなくなるのは、個人の問題だけではなく、本当に必要な教育や戦略を営業組織に与えてこなかった企業の責任も大きいと考えます。
大きな変化が起きている今だからこそ、見直しをする時だと思います。
営業の意識の問題、これからの時代で益々重要になってきます。
受動的な営業は、顧客から言われたことを実行し、結果の確認を待ち続ける、このような動き方が訪問できないことで、さらに受動的にしていきます。
そのような時に顧客に会ってもらう理由として活用していた上司との同行セールス、この動機付けもリモートセールスではうまく機能しなくなります。
そうなると受動的な活動をしてきた営業組織は、まったく売れない時代に突入していきます。
購買プロセスをコントロールできる能動的な営業組織に変わらなければ生き残りが難しくなると思いますが、いかがでしょうか。