持続的成長するための営業組織マネージメントフレームワーク~第一章:なぜ、営業組織は結果を出せないのか~ 3. 目標を失った営業文化

どんな仕事に就いたとしても評価のポイントは、目標に対しての結果になります。
営業の評価対象は、売上数字と目標の達成率になります。
常に目標数字を達成するトップセールスマンは、組織のヒーローとして扱われ、新人の営業はいつかあのようなセールスに自分自身もなりたいと考えていたと思います。

しかしそれは過去のことになっていませんか?

あなたの会社の営業を見渡してみて、憧れのトップセールスマンになりたいと考えている人はどのくらいいますか?
全員がそのように思い、トップセールスマンを目指す努力をしているのであれば健全な営業組織だと思います。しかしそうでないのであれば営業文化は健全ではなく、営業マネージャーは営業組織の変革が必要であると思いますが、いかがでしょうか。

多くの営業組織が持っている危機感

コンサルティングで入らせていただくと経営者からでてくる言葉は、新規開拓ができる営業組織にしたいということです。

業績が落ち込んでいる会社からはわかりますが、順調に業績を伸ばしている会社の経営者からもこのフレーズが第一声で出てきます。
なぜそのような言葉が出てくるのか、売上げを見てみるとほとんどが既存顧客への新製品によるリプレースで構成されています。アップセルができているのであれば良いですが、取引のほとんどは競合と比較検討され、新機能をつけた新製品であっても前回より低い取引額になっていることが多く見受けられます。

経営層は既存顧客だけで支えられている状況に危機感を感じ、新規開拓ができる営業組織に変えたいと考えています。

しかしこのような企業にも年間目標を継続し達成するトップセールスが存在しないのかというと存在しています。
経営者の方に「なぜ、その営業の方々に新規開拓を行わせないのですか?」と質問すると必ず2つの答えが返ってきます。

一つは、新規に力を入れさせると既存顧客の売上げが落ちることが心配なため注力させられない、二つ目はそうはいっても新規開拓もやってもらっているが、結果がでないことが注力させられない理由でもあります。
なぜでしょうか?

実は、これが最近の営業組織の特徴になります。ほとんどのトップセールスを含めた営業が、自社の強みや価値を訴求することができ、顧客との持続的な関係を構築する能力は高いが、新規顧客の開拓能力を持っていません。

それが感じられるため経営者は思い切ったシフトができず、新規開拓能力を持つ営業組織に変えたいと考えているが、実は中途半端な変革となり、結果が出ていないのがほとんどです。

憧れのトップセールスが存在しない組織

確かに弁がたつ、顧客との関係構築も高く、先方の役員ともコンタクトして交渉する、トップセールスはさすがと思わせるものがあります。

しかし後輩から見ると同じ顧客から同じような商談で数字が作られていることを見るうちに、果たしてこの人は新規顧客を開拓できるような営業なのだろうか、違う顧客を持たされた時に数字を作れるのだろうか、この顧客を持っているから数字が作れているのであって本当は大した営業ではないかもしれない、こうした考えが組織に蔓延していきます。
そして最終的に良い顧客を持つか持たないかで営業の評価は変わるという考えに変化していきます。

担当者の方になぜ目標数字が未達なのかをインタビューをすると

「上司に気に入られるかどうかで評価が変わるので、それにより与えられるテリトリーが決まります。」
「テリトリーが厳しいので数字を作るのが難しいです。もう少し可能性がある顧客を持たせてもらえれば変わるのですが。」
「今年は計画されていた投資が凍結したことで数字が作れませんでした。来年は投資が行われるので来年の数字は心配していません。」
「毎年、引き合いの中からいくつか契約することで数字を作ってきたのですが、今年は引き合いが想定より少なかったことが原因です。」

この回答を見ていかがでしょうか?
何かが違うと感じませんか?

テリトリーが良いか悪いかが結果を左右する最大要因であり、その次に営業としての能力が問われる、これが担当者の営業に対する今の見方です。
テリトリー変更で担当企業を外すことに反対する営業が多くありませんか?
外すのであれば目標数字も下げてほしいと言われませんか?

多くのターゲット企業を持っていれば何かしらの引き合いがあるかもしれない、少しでも可能性があるのであれば持っておきたい、そのように考える営業があなたの会社に多くいませんか?

いつから営業は多くの引き合いを得られることを重視し、引き合いを待つことが仕事になったのでしょうか?

営業の存在意義とは何なのでしょうか?

数字を見ればトップセールスはいるが、本当のトップセールスが存在しない、これが現実であり、このことにより営業組織が本来の営業機能を果たせていないのです。

営業職は専門職

外資系の営業は達成した数字により給料が支払われるインセンティブ制による専門職として扱われています。
日本では営業職にインセンティブ制をとっていない企業も多いかと思います。しかし営業という仕事の給与は、こなした仕事量で支払われる時給制ではなく、出した結果により昇給し支払われる、結果を評価する体系に日本もなっていると思います。

そのため専門職として認知されていない営業であっても、既存顧客から新たなビジネスを獲得する、新規顧客を開拓し契約することで売上げを作る。それらを積み上げて目標数字を達成する、これが営業に求められる仕事であり、これにより給与が支払われていることを営業一人一人がもっと考える必要があります。

数字絶対主義と絶対数字主義

仕事に求められるのは結果であり、営業は数字により結果が評価されます。
そのため数字絶対主義という評価が一般的です。
しかしこれは数字さえ上げていれば中身は関係ないという文化を形成していきます。

そうすると既得権益を持っていることが有利であると考えるようになります。
既得権益とは引き合いが多い顧客です。
しかしいつから営業は既得権益を重視し、引き合いを待つことが仕事になったのでしょうか?あるいは既存顧客から定期的な数字を獲得することが仕事になったのでしょうか?

営業の本来の仕事は新規顧客や新規商談を獲得し、トップラインを伸ばしていくことにあります。
そのために事業戦略で未開拓である顧客をターゲットと設定し、営業組織に攻略を指示しています。
既得権益に縛られた状態では、このような戦略が機能するはずがありません。
機能させるためには数字を絶対視する数字絶対主義だけではなく、新規顧客や新規商談獲得を評価し、その上で達成数字を評価する絶対数字主義を評価に加える必要があります。

絶対数字主義とは、定期的な既存商談からの売上ではない、顧客に新たな価値訴求して作り出した新規商談や今まで取引がなかった新規顧客からの売上げ数字を評価する、会社のトップラインを引き上げる営業実績を評価するということです。

これからの営業組織には、数字絶対主義と絶対数字主義、この二つのバランスを取って評価することが必要です。

どんなに小さな商談であったとしても新規顧客を獲得したことを評価する、数字の中身を見て評価することが大切です。
その商談が会社のトップラインを引き上げる芽として成長させていくことに必ず繋がることになりますし、それを評価しなければ営業は楽な方にしか動いていきません。

新規顧客を獲得するために奔走し、打たれてもくじけずに努力し、そして小さいながらも獲得してくる、そのような営業が組織の中に何人いますか?
もしそのような営業がいるのであれば、その営業がモチベーションを下げずに活動できる環境をマネージャーは作ってあげるべきです。

もし皆さんの会社にそのような営業がいないが、新規顧客や新規商談を獲得して成長していくことを掲げているのであれば、適正な目標と結果に焦点をあてた営業文化を育む必要があります。

トップラインを伸ばすための営業の仕事とは何か、苦しくても結果を出さなければいけない事とは何か、それを目標とし努力して結果を出す、そうした営業文化が必要だと思いませんか?

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