経営者が解決したい法人営業課題:第7回 既存顧客との取引拡大

2020. 06. 13

経営者・営業幹部が感じている「会社の強化したいポイント/課題」の第7位が今回のテーマである「既存顧客との取引拡大」です。

第1回が1位の新規顧客の開拓でした。
経営基盤を支えるためには成長が必要であり、そのためには新規と既存の拡大であると考えているため、新規顧客の獲得に並ぶ課題であると思っていた既存顧客の拡大が、7位というのは想定外でした。

これまで上がってきた課題は、
第2位 営業プロセス全体の見直し
第3位 営業・マーケティング戦略の策定・改善
第4位 顧客情報や商談情報をデータ化して共有
第5位 営業マン個人のスキル向上
第6位 行くべき先、やるべきことの明確化

それぞれの項目について、弊社なりの考察をしてきました。
全てで述べてきたことは、法人営業戦略による達成目標は個別の商談を成約することだということです。
そのために必要なプロセスは何か、必要な戦略は、戦略を実行するために必要なスキルとは何かを説明してきました。

そこで今回は、既存顧客の拡大をしていくために、今まで考察した2~6位の課題以外の何が必要かを考えてみたいと思います。

既存顧客との取引拡大をするためには

アンゾフの成長ベクトル

既存顧客内での拡大をアンゾフの成長ベクトルで検討してみることにします。
マーケティングや営業戦略を策定する場合、戦略の方向性を検討するのに利用されているものです。

図1-6

顧客内成長ベクトル

これを顧客内の戦略方向性に置き換えると以下の図のようになります。
図2-4
実績ができた顧客内でビジネス拡大の方向性を検討する場合に利用するのが、この図となります。

既存浸透:取引している商品・サービスのシェアを拡大する他社シェア攻略戦略
顧客内開拓:取引実績を獲得し評価を得ている商品・サービスを他の部門や事業部に提供し、顧客内シェアを高めていく市場開発戦略
付加価値提供:取引実績により得た顧客からの信頼を活用し、新たな商品・サービスを提供する顧客内価値向上戦略
新規開拓:顧客内取引実績という企業信用を活用し、新商品・サービスを新たな部門・事業部を開拓する新価値提供戦略

成長ベクトルでの検討

アカウントプランなどを活用し、どの方向での攻略を行うか、そのためのアプローチをどう行っていくかなど、検討して攻略している企業がほとんどないのが実情です。
戦略なくして既存顧客内で取引拡大を進めることはできません。
取引拡大戦略、そのための攻略ルートの立案を行い、PDCAを廻していくことが必要です。
そして取引拡大には戦略が重要ですが、既存顧客の取引拡大戦略を立てる際に考えるべき重要な要素があります。
それが今回の考察のポイントになります。

取引拡大に大切な重要ポイント

顧客内価値の理解

顧客は取引先として選択する際に、ビジネスに必要な価値提供があると認識したから購買しています。
課題解決ができるというだけではなく、取引先がその分野のリーダーであるという価値、納期対応が柔軟であるという価値、望んでいるサービスを柔軟に提供してくれる価値など、顧客に確認すると言葉として出てくる価値は以上のような表現になります。
しかしその言葉の裏には、得られると考えている潜在化した価値があります。
それは顧客ごとで違い、顧客が見出しているロイヤルティにあたります。それが何であるかを知ることが重要です。

ロイヤルティを活かした独自付加価値への意識

そしてそのロイヤルティを活かして、取引拡大の戦略を立案することが成功するためには必要です。取引実績を持てたということは、顧客視点を理解しやすいポジションを築けたということです。
そのポジションを活用する意識を持つことが営業は大切になります。

先ほどの価値開拓の象限は、顧客に新価値提供により取引を拡大していくことになります。
その時に顧客が安定稼働や安定供給など安定にロイヤルティを感じ、取引を始めてくれたのであれば、新商品を提供する場合も競合よりも安定を前面に出す資料を準備して説明をすることです。
それが、顧客が評価する付加価値の一つになり、独自性につながることは間違いありません。
新規部門などへの市場開発戦略の場合も同様です。ただし事業や部門により考え方が違うこともあるので、取引部門が重視ているロイヤルティが企業として重視しているロイヤルティかを確認し、新たな部門への提案に盛り込むようにすると良いと思います。

取引ができたことで今まで深く知ることができなかったロイヤルティという情報、これを戦略立案に活用することが必要なのです。

経営ビジョンの違いが企業風土を作る

大切にしていることは何か

同じ商品を販売しているが販売企業ごとに重視していること、大切にしていることは違っています。
それと同様に購買する側も取引先を決めるにあたり重視することが違ってきます。
安定を好む企業は、どんなに課題解決に最適だと判断しても納入実績などを重視し、取引先を選択する傾向があります。これは企業文化であり、企業風土です。そしてこうした文化や風土が、顧客がビジネスを拡大してきた源泉でもあるのです。こうしたことを意識して顧客への価値提供を検討することが、非常に大切になります。

取引があることの優位性

そしてこれを本当にわかる、すなわち企業内で潜在化して暗黙知化していることまで垣間見られるようになるのは、取引を開始してからです。

顧客から、まだ弊社のことを理解できていないねと言われた経験はありませんか。それはこのことを指しています。

あるいは、同じトラブルが発生しても取引先のA社とB社で温度感が違うと感じた経験はありませんか。恒久対策を重視する体質と早期復旧を重視する体質、一方は同じ過ちは二度と起こさないことを重視しそのことにより取引先から信頼を得る、もう一方は取引先へのビジネスインパクトを最小化できることを重視する。
このような違いは、その企業の理念や顧客に持ってもらいたい信頼など、それらを重視し考えて行動することから変わってきます。
このような顧客の企業の考え方を営業は知っておく必要があります。

パートナリング

取引ができたからこそ、その取引を維持し拡大していくためには、顧客理解が必要です。それが長期関係を構築していきます。
そして顧客との真のパートナリングを作るためには、取引を繰り返していく中で自社の考えや企業風土を顧客に理解してもらい、尊重してもらえることも必要になります。
お互いを信頼できるようになり、始めてパートナリングが形成されます。

まとめ

営業活動でもデジタル化が進んだことで、購買の動きを均一の理論に押し込むことの弊害が出始めているように感じます。
インターネットやWebを活用した顧客の情報収集活動から自社が想定する情報へ導くMAなどの技術の活用、こうした技術は購買の決定まで導けると過剰に宣伝しているケースもあります。可能性は否定できませんが法人営業で実現するためには、導くために必要な情報収集にまだ、営業の力が必要です。

同じ商品・サービスを購入しても、顧客ごとに重視していることや譲れないことは違います。そして法人営業では購買に多くの人が関係するため、購入決定までのプロセスが複雑になります。

複雑であることを理解し、複雑なコンセンサスはどのようにして合意するかを紐解きデータ化する、そのようなことを今から考えデータを蓄積している企業が、営業のDXを実現できるのだと思います。

営業の仕事は、顧客の購買プロセスを自社に有利に導く活動です。競合がどんなに有利であっても自社を選択してもらう、そして選択したことを顧客に喜んでもらい長期関係を築く、これが営業の醍醐味です。

そのような営業ができる組織は、顧客を理解し、顧客に何が提供できるかを考える、顧客視点を持っています。
弊社のサービスは、このような組織作りを手伝いたいと考えています。

もう少し詳細に話が聞きたい場合は、無料相談までコンタクトをお願いします。

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