経営者が解決したい法人営業課題:第3回 営業・マーケティング戦略の策定・改善

2020. 06. 23

今回のテーマは、経営者が解決したい課題の第3位である、営業・マーケティング戦略の策定・改善についてです。

ですがこの課題が出てくる理由は非常に幅広いため、これを解決すればという原因を絞り込むことは難しいです。

そこで今回は、20194月に株式会社アタックス・セールス・アソシエイツがプレスリリースしている「日本の営業実態調査2019」から現場の問題としてあがっているものを取り上げ、それを解決するためには何が必要かを考察したいと思います。

営業活動における新規開拓の割合は

以下のグラフはプレスリリースに発表されている「営業活動における新規開拓の割合」というグラフです。母数は3,360件の回答の割合になります。

アンケートから想定する問題点

このアンケートに回答者がどのような判断をして回答したかがわかりませんが、弊社は営業が商談して図2いる件数もしくは成約数が、既存が多いか、新規が多いかで回答したのではないかと考えています。

それは過去の経験より、成約件数は既存顧客が約6~7割以上占めていることが多いこと、新規商談は引き合いや紹介などで占めており商談自体を営業が作ることがほとんどないことが多いためです。

一方でもし引き合いや紹介でしか新規開拓をしていないとすると問題です。
それは法人営業において成約するための重要な要素の一つが、顧客との関係性が作られているかだからです。

地ならしという活動

取引額が小さく顧客のビジネスに影響が少ないものであればいいですが高額な取引において、ほとんど面識のない担当者と取引を開始することはありません。
そのため法人営業では、地ならしという信頼関係を築く活動が必要となります。

しかし新規顧客開拓が行われておらず新規商談が引き合いや紹介になっていると、商談が開始されてから地ならしを始めるケケースとなってしまいます。

地ならしが難しくなった背景

このようになっている背景は、法人営業が取り扱っている商品・サービスのコモディティ化が起こっており、営業を介して情報収集することが少なくなったことが一つの原因です。
つまり顧客から情報収集の段階で声がかからないため、訪問をするきっかけが掴めないということです。

地ならしのデジタルシフト

声がかからないのであればできる限りの情報を顧客へ提供する必要があると考え、あらゆる情報提供をデジタルにシフトし、アクセスをトラッキングすることで、顧客の検討状況を推し量ったり、タイミングよくオンラインでコンタクトしたりすることが主流になっています。

地ならしのデジタル格差

しかしこうした動きは、法人営業を持つ企業間でデジタル格差が起こりつつあります。
潤沢な資金と人材がいる企業であれば投資をし続け、情報を提供し続け、多くの顧客を取り込める可能性もありますが、中堅、中小企業ではそこまでの体力がないのが実情です。
このままでは格差が広がり、良いものを作っても顧客まで届かず、ビジネスにならない企業が増えるのではないかと危惧しています。

重視すべきは、戦略構築

ではどうすればよいかですが、新規顧客開拓を引き合いや紹介だけに頼るのではなく、自らが開拓するための戦略の構築と実行を徹底的にやるべきだと思います。

この十年間、不況と言われていましたがそれでも経済は僅かばかりですが上向いていました。ですから引き合いや紹介でも新規顧客開拓ができていました。
しかしこれからは厳しくなることが想定されます。その厳しさを乗り越えるためにも、戦略の見直しが最重要だと考えます。

そしてその戦略を考えるうえで中心に考えることは、顧客です。

顧客は情報を収集するためにデジタルコンテンツにコンタクトしてきます。
そしてそこにある情報は、文字を中心としたデータです。
文字情報と比較して動画のほうが伝えられる情報が多く、それが双方向であればさらに多くの情報を顧客は得られ、理解することが可能になります。

顧客の安全を担保し、必要な情報を提供し、関係を構築し、購買プロセスを動かすために最適な方法は何か、デジタル、オンラインだけに捕らわれず、オフラインを含めて作り上げた新規顧客開拓の戦略と戦略実行プロセスを構築し、PDCAを廻す仕組みを作り上げることが大切だと考えます。

目標達成者と未達者の理由

達成者、未達成者の振り返り

このニュースリリースで非常に興味深かったのが、達成者と未達者それぞれが、何故そのような結果になったと考えているかのアンケート結果です。

アンケート総数:2,506
達成できた(50.6%):1,269回答
達成できなかった(49.4%):1,237回答
達成割合が約半数の結果です。

図1-4

目標達成プラン力

このアンケートを見て達成の有無にかかわらず、目標達成プラン力が弱いと感じます。
目標達成プラン力とは、年間の総パイプラインを成約月ごとに見渡し、各四半期を達成し続けるためにどのように活動するかを計画する能力になります。

以下のサンプルでは第二四半期の開始時に青の目標に対して、第一四半期のActual:実績と第二四半期以降の持っている商談をCommit:確実な案件、Upside:五分五分な案件、Pipeline:商談があることを確認、に分けてグラフ化したものです。

図3

これを毎週確認し、チームや個人の着地予想と状態を把握し、年間達成に向けて必要な活動を特定し進めていくのですが、この活動がうまく機能していないのではないかと結果より推察されます。

うまく機能していない理由としてよくあることは、当月もしくは当期については確認をするが、翌期から年間について状態を把握する時間を取らない。
そのため毎月あるいは毎期が自転車操業で運転されているケースです。

担当営業も営業管理者も毎月、毎期の達成を第一に意識するため、どうしてもそのチェックに意識が集中してしまいます。
そして未達の流れができてしまいますと更に目先の達成の活動を重視し将来への活動が足りなくなり、悪循環になっていきます。
こうなると負のスパイラルが加速され、目標達成プランどころではなくなります。

このようになった時には、一度立ち止まり、勇気を出して今月あるいは今期の数字を捨てて、来月あるいは来期から計画的に進められる流れを作り直すことです。

流れを変える勇気を出さなければ、組織が崩壊する危機に陥ります。

目標達成をコントロールする

アンケートを見ると既存顧客の商談数や大型案件により足りない数字のリカバリーができた人が達成し、そうでない人が達成しないように見えます。

これは目標達成を自らの活動でコントロールする動きができていないことを表しているということです。

目標達成をするために商談を作るあるいは探すことができていないのは、個人の問題ではなくマネージメント層あるいは営業組織に問題があります。

部下に具体的な指示ができますか?

先ほどの年間着地予想のグラフが、あなたの部下のものであったとします。
部下に対してどのような指示を行いますか?

第二四半期はおろか、残りすべての四半期を未達で終えて年間目標の半分も達成しないかもしれません。
明らかにこの部下は、達成するための能力が足りないことによりこの状態にあります。
この状態から抜け出すためには、部下に対して具体的な活動指示を出す必要があります。
しかもその指示は、部下が確実にやり切れば抜け出すことができる、成功プランを提示することが上司には必要なのです。
それを提示できるためには、日頃から部下を観察し、生産性を上げるために足りていないことは何か、手助けするべきことは何かを見えていないとできないと思います。

成功プランを提示できるか、それが上司に求められる具体的な指示になります。

マネージャーや組織の問題とは

先ほど、目標達成のためのコントロールができていないのは、マネージャーや営業組織に問題があると書きましたが、それは適切なタイミングで具体的な指示ができていないことが原因です。

マネージャーによっては、できないのは本人の努力が足りないのだから本人の問題だと反論される方もいます。しかし、その個人に結果を出させるのはマネージャーの仕事です。
その結果のためには、具体的な指示が必要になります。

部下は、自分自身の置かれている状態を一番よくわかっています。しかしその状態から抜け出すための効果的な具体的な方法がわからないのです。

そのようになってしまうのは、仕方がないことだと思います。
なぜならば入社してから誰も抜け出し方を論理的に教えてくれていないのですから。そしてその方法を上司もわかっていないことが、このような問題を引き起こしている原因になっているのです。

そしてこれほど大切なことを今まで考えてこなかったことは、営業組織全体の問題だと思います。

なぜならば、業績目標を達成するためにこれ以上に大切なことがあるでしょうか。

ここでも必要なのは、戦略の重要性

商談を作るための戦略と成約確率を上げるための戦略、この二つの戦略があれば、対応策が明確になります。

そして戦略のある企業は、営業管理者層が以下の5項目を実行できます。

  1. 年間のUpside, Pipeline案件に関して、Commitにするために必要な活動を具体的に指示ができる
  2. 新規商談を作るための具体的な方法とターゲットの優先順位を具体的に指示ができる
  3. 部下からの報告のみで商談の確度を判断できる共通指標を持っている
  4. 商談がある程度進んだ時点で、成約できるか敗退するかを見極めができる指標を持っている
  5. 悪循環から脱却させるための具体的な指示を行い、脱却させられる

1は、今のセールスステージを効率的に上げるための指示ができるかということです。
この時に重要なのは、上司と部下との間でステージを上げるために必要な課題が共通化されていて、その課題達成が絶対条件として共通認識されていることです。
そしてここで具体的な活動を見つけるためには、部下と実行内容を協議し、目標とする結果が出せるアプローチを両者で策定できる基礎知識を持っている必要があります

 

2は、文字通り、商談を作る活動です。
多くの法人営業部門は新規開拓を顧客の商談依頼による引き合いが多数を占めています。しかし引き合いによる新規開拓しか行っていないと達成のためのコントロールはできません。先ほどのアンケートで、テリトリーに恵まれた、商談件数が少なかったなどが多いのは、これが理由です。

また商談が発生していない状態ではフィールドセールス(FS)がコンタクトするのではなく、インサイドセールス(IS)やMAに任せるという考え方が主流を占めていますが、経験からFSがコンタクトし商談を作るほうが約3倍、商談が成約する確率は高くなります。
電話でもリモート会議ツールでもよいので常日頃からコンタクトさせ、新規商談を作る活動をしていることが重要です。
足りないから商談を見つけろという指示では、ごみのような商談が増えることになります。

 

3が最も重要ですが、上司と部下が共通指標で商談の成約確度を判断できるかです。
指標とは、「課長は弊社を押してくれているが、部長が反対しているからリスクが高いね」あるいは「部長が反対しているようだが、課長が弊社を強く推してくれているので、あとはこの課長も強く推してくれるようにすれば成約は固くなるね」など、顧客組織のパワーベース等から判断する指標を持っているかです。(売上予測を高めるためには、必ず必要な指標です。これを作るだけでも成約率は大きく変わります。)

共通指標による判断ができていなければ、確度が低い案件にもいつまでも力を注ぎ続けることになり、新規開拓などの必要な活動に力を回すことができなくなります。

 

3を進めながら4を判断します。
可能性のある商談と足りないパイプライン獲得のための活動にどれだけの工数をさけるか、多くの工数を確保するためには早い段階の見極めが必要になります。
成約に必要な指標目標を達成するための戦術を展開し、顧客の反応から進退の判断をする。結果が出るまでだらだらと商談を追うのではなく、早い段階で成約の確度を判断し、限られたリソースを最大限に活かせる基準を持つ必要があります。

 

そして最後は、未来に向けてどうするかの戦略です。
例にあるような年間を通して必要なパイプラインが大幅に足りない、このようなケースは多々あると思います。
そのような状況であっても年間達成できているためには、どのような戦略で臨むべきかをマネージャーは明確に指示できる能力が必要です。

どのように動くべきか、今の状況を見て、個別に具体的な指示、アドバイスができる必要があります。
その時に必要なのが、先ほども話しましたように新規顧客の開拓戦略を持っているかです。
ターゲット戦略や差別化戦略だけではなく、開拓するための戦略です。
この開拓戦略は、常日頃からやり続けていないとうまく機能しません。
ですのでパイプラインが潤沢な時も戦略を実行し続けていることで、足りない時に効果を発揮することができるのです。

開拓の戦略がない、だから新規開拓を実行していない、これが目標未達の大きな原因です。

新規開拓の戦略とは、新規開拓のやり方の戦略ではなく、この方法で新規開拓を実行すれば、確度が高く新規顧客から成約できる戦略のことです。

そして営業組織としてそのような新規開拓の戦略を作り活動する、これが経営者と営業管理者層の課題になります。

営業・マーケティング戦略の策定・改善が3位に上がっているのは、先に挙げた5つの課題ができていないことによるのかもしれません。

まとめ

営業組織、営業担当者の不幸は、教育がないことです。教育がないとは、トレーニングをしていないことを指している訳ではありません。

OJTあるいは社外を利用して様々なトレーニングをしているところもあると思います。しかしそれは対処法のトレーニングであり、成約するためのトレーニングではありません。

そして成約するためのトレーニングができるためには、成約のための戦略と新規顧客開拓の戦略がなくてはできません。

日本の営業組織が強化されるためには、この戦略を作る動きが必ず必要になります。
そしてその戦略をうまく実行するために必要なのは、ITを戦略に結びつけて活用できる仕組み作りになります。

これから非対面など、法人営業の活動方法を変えていかざるを得ない中、手法だけを変えてもうまくいくはずがありません。
新たな環境で営業を強化し生き残る企業になるためには、成約のための戦略と新規開拓の戦略を作るべきだと考えます。

この2つの戦略がどういうものか、もう少し詳しく聞きたい場合は無料相談まで連絡をください。

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