経営者が解決したい法人営業課題:第1回 新規顧客の開拓方法

2020. 07. 29

経営者や営業幹部が抱えている課題で最も多いのが、新規顧客の開拓になります。企業は存続していくためには成長していく必要があり、その成長のためには新規顧客の開拓が必要となります。

更に今後の経済情勢では今まで以上に重要になることが想定されます。

前回のコラムで書きましたようにB2B企業の約60%が予算縮小しているため、既存顧客からの大幅な売上減が発生する可能性があり、それを補うための顧客開拓が必要となります。

まずは経営者層が考える新規顧客の開拓の問題とは何かを考えたいと思います。

経営者から見た新規顧客の開拓の問題

新規顧客の開拓が進めるために色々な打ち手をするが思うように進まない、このような時に経営者が問題と感じるのは、以下の3点に集約されるのではないでしょうか。

  1. 見込み客が少ない
  2. 見込み客はあるが成約できない
  3. 新規顧客を安定して獲得できない

経営者からは結果しか見えないため、どうしてもこの3点に集約されると思います。

そしてこれらの問題の原因そして解決法は、営業管理者層にもわからないのが実情です。

このような問題の原因と解決法を考えていきたいと思います。

見込み客が少ない問題

STPを考える

新規顧客の開拓目標が未達の場合によく出てくるキーワードが、見込み客が少ないです。

この問題が発生している原因はSTP:セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの設定が十分に行われていないことにあります。

セグメンテーションとは

セグメンテーションは、ドメインで設定している市場に対して同じような顧客をグループ化する考え方になります。

このときによく行われる分類が、業種、規模などによるものになります。

しかしこのような市場で取得できる情報だけではなく、想定できる顧客ニーズを加味したグループ化を行い、市場規模や成長性が判断できるセグメンテーションを行うことが求められています。

ターゲティングとは

セグメンテーションによって細分化した市場に対して、自社が攻略すべき市場の特定を指します。
市場の魅力度と自社の保有資源(ソリューション、販売網、サービス網など)を考慮して、攻めるべき市場の特定を行います。

ポジショニングとは

ターゲットした市場内での競合との比較によるポジションの明確化を行います。
価値提供とコストを比較し、この市場内での差別化戦略を作ります。

なぜSTPが必要なのか

実は見込み客が少ないのではなく、新規成約数が少ない原因を見込み客が少ないと判断しているケースがほとんどだからです。

達成すべき目標は、新規顧客開拓数です。
その目標を達成し続けていれば見込み客数は十分であり、未達であれば見込み客数が不十分という判断が行われています。

この誤った判断が行われる状況を解決するためには、STPの考え方を取り入れる必要があります。

STPに取り入れるべき考え方

必要なことは見込み客の数ではなく、成約できる見込み客にリーチすることにあります。
そのためには、成約できる見込み客とはどのような見込み客であるかを定義する必要があります。

その定義のためには既存顧客の情報を整理し、自社なりの定義を作る必要があります。
この定義は試行錯誤になるかもしれませんが、作成し、以下の確認を行い、PDCAを廻していきます。

  • 定義した見込み客にリーチを行い、担当者のコンタクト情報を取得できているのか。
  • 定義した見込み客から商談はどのくらい作られているのか。

そしてPDCAを廻していく過程で見込み客が多い少ないが判断でき、少ない場合はSTPを変更して対策を取ります。

まずはSTPの定義を行う必要があります。

見込み客はあるが成約できない問題

STPを設定したことで見込み客にリーチができ、引き合いも取れるようになり商談に参加するが敗退する、
そのようになる多くの理由は、商談への参入ポイントが遅いことが原因です。(こうしたケースの場合、見込み客の育成という戦略を持っていないのがほとんどです。)

図を見ていただきたいと思いますが、左軸は顧客が取引先をどのように見ているかを表し、横軸は購買プロセスをプロットしています。

表の見方ですが、自社がどのタイミングで声がかかることが多いかを確認し、そのタイミングから顧客からどのように評価されているかを知ることができます。

例えば、RFPが出るか出ないかぐらいの時に声がかかる場合は、認定ベンダーとして見られていることになります。

そしてこの表にはもう一つの使い方があり、自社が顧客からどのようなポジションとして評価されたいかに対して、最低でも購買プロセスのどのタイミングで参入する必要があるかを確認できることです。

図1-1

それぞれのポジションについての細かな説明は省きますが、圧倒的な価格競争力がない限りは最低でも目指すべきポジションは、ソリューションコンサルタントになります。

そうすると購買プロセスの仕様検討時には、顧客とコンタクトし商談を開始している必要があります。

そのためこのタイミングで参入するための戦略と参入後にソリューションコンサルタントとして評価され、商談を進められる戦略が必要となります。

商談を進められる戦略となると通常は、自社のソリューションの優位性を訴求し、検討してもらうことを組み込むことに力を入れるかと思います。

しかし目的は成約することです。
その成約のための最短ルートを進むことができる戦略が求められます。
自社のソリューションが顧客の課題解決に最適であることを理解してもらい、競合からの敗退リスクを少なくできる、そのための戦略が必要になります。

これを弊社では購買プロセスをコントロールする戦略と呼んでいます。
このコントロール戦略をどれだけシンプルに現場が腹落ちする戦略にできるかが、戦略の良し悪しを左右します。そしてコントロールするとは、顧客の出方を見て打ち手を出すではなく、ソリューションを評価いただいた顧客と一緒に購買プロセスを最短ルートで進んでいく戦略となります。

新規顧客開拓の目標を達成するためには、商談への早期参入するための戦略と成約までの購買プロセスコントロールができる戦略を構築し、実行するための仕組みを作る必要があります。

新規顧客を安定して獲得できない問題

新規顧客の開拓は、短期間で成し遂げられるものではありません。
しかし企業業績に直結しているため、活動を頻繁に修正変更したり、無理な目標を設定してトラッキングしたりしてしまいます。

短期間で成し遂げられないものを頻繁に変更することで、正確なデータが取れなくなりその結果、現場は混乱をきたし、新規顧客開拓のモチベーションが下がることになります。(どうしても営業の業務は、人や組織を相手にするために理論化ができないと考えられています。そのためこのようなことが起こるのですが、理論化できないと考えずに理論化することを意識することが必要です。)

モチベーションが下がってしまうと新規と既存を分けて担当していない営業担当者は、新規の活動を全く行なわなくなってきます。

このような問題を解決するためには、「新規顧客から成約するための戦略」を持つ必要があります。

営業戦略を見させていただくケースが多いですが、ほとんどがターゲット戦略と差別化戦略で「成約するための戦略」が欠落しています。

「成約するための戦略」を持たないで営業活動しているため、どのようにすれば成約できるのか、成約までの最短ルートはどうすれば作れるのかなど、成約するための方法論がわからないのです。

わからないというのは語弊がありますが、誰も説明ができず、営業の俗人化が起こっているということです。(工場の現場では、加工の順番やノウハウを指導され、加工技術を身につけていきます。そしてうまく加工ができない場合は、その理由と改善方法を具体的に説明され、理解を深めていきます。素材の特性とその時に生じる現象、そうしたノウハウを吸収しながら自分なりの加工理論を身につけていき、守破離が起こります。営業も同様に売り方を戦略に引き上げ、仕組みを作り、ノウハウを継承できるようにする必要があります。)

先ほどSTPを設定し、リーチすべき見込み客にコンタクトを行うと書きましたが、その見込み客を確実に成約するためにどのようにすればよいか、これを戦略に落とし込むことが、「成約するための戦略」になります。

 

「成約するための戦略」とは、リーチできた見込み客から高い確率で成約できる理論になります。

 

そしてその理論とは、新規顧客の購買プロセスをコントロールする方法になります。

 

購買プロセスとは、購買承認者全員がその購買に同意もしくは反対の結論を出すことになります。

その購買プロセスをコントロールするとは、購買承認者全員が自社のソリューションの購買に同意を得るように導く方法と定義しています。

それを理論に基づいた戦略に落とし込んだものが、「成約するための戦略」となります。

 

理論化できていなければ、問題が起こっても原因がわからず、解決法を導き出すことはできません。

しかし理論的に解釈できる戦略であれば、何を修正すればよいかが見え、現場も経営層も適切な改善策を進めていくことで継続的に新規顧客の開拓を進めることができるようになります。

まとめ

新規顧客の開拓で経営層が問題と感じる3点について説明を行いましたが、共通するのは必要な戦略がないことです。

戦略は略して戦うと書きますが、目的は勝つことです。

回り道をせず、効率的な勝ち方をするための現場が腹落ちした戦略を練り上げる、これが重要となります。

新規顧客の開拓のための戦略、再検討をすることが必要だと考えています。

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