Withコロナ時代に必要な営業技術:アクティブリスニングとSPIN話法

2020. 08. 26

非対面が常態化し、面談による営業活動がほとんど行われなくなりました。

一方でオンラインによる営業活動が顧客に受け入れられたことにより、移動時間などが必要なくなり、1日の顧客面談回数が増え、営業の効率化が進んだとも言われています。

しかし顧客訪問回数にあたる面談回数が増えているが商談化率は増えるどころか減少し、商談日数も長期化している企業が多いということも聞こえてきます。

そこで今回は、このようになってしまう理由と解決するために必要な営業技術は何かを紹介したいと思います。

信頼が取引を成立させる

顧客が購買を決断する要因は何でしょうか?

競合他社に比較して価格が安い

投資対効果が見込める提案になっている

ビジネスを変化させる戦略的要素があり、ビジネスインパクトを持っている

 

確かにこのような要素が購買を決断する材料になっていることは間違いないと思います。
特にB2Bの購買承認では複数の決裁者の承認が必要となるため、それぞれの決裁者が承認するだけの説得力のある購買理由が必要となります。

キーマンが重視していることは?

では、キーマンが重視していることは何でしょうか?

キーマンとは商談を進めていくにあたり、自社が優位に進められるために攻略すべき人物と定義します。
つまりこの人物が攻略できれば商談の成約確率をあげられる、商談における重要人物になります。

このキーマンが数いる営業を選択するのに重視していることは何でしょうか?

それは信頼です。

信頼とは何か?

しかし信頼とは何でしょうか?

信頼がある営業像はと問いかけると以下のような回答が返ってくるのではないでしょうか。

“信頼できて正直な人物”

“正直で誠意があり、期待に応えてくれる”

“客観的に物事を見て、正直に意見を述べる”

しかしこれではどのような人物像化はイメージできますが、どうすれば信頼を得られるのかがわかりません。

信頼を得るために最初に必要なこと

自分の話を熱心に聞き、その話を的確に理解しようとしてくれる人を皆さんは信頼するのではないでしょうか。
それは相手が自分に興味を持ち、より知りたいと思ってくれることが共感してもらえていることに感じるからではないでしょうか。

アクティブリスニング

聴く技法のひとつに傾聴というものがあります。コミュニケーション技法のひとつで、会話をしていく中で相手の事実や感情を読み取ることを意識して進め、相手を把握していく技法です。

この傾聴を理論化したのが、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャース博士であり、1957年に発表したのが「アクティブリスニング(積極的傾聴)」になります。

この積極的に傾聴していると感じてもらうための6つの必要なレスポンスがあります。

6つのレスポンス

  1. 聴く

    相手に自分自身が聴いていることを感じてもらう必要があります。特にリモートでは画面越しとなるため黙って聴いてコンピュータに打ち込みをしていては、聴いていることは相手に伝わりません。タイピングをせずにできるだけ相手の顔を見るようにし、タイミングよく相槌を打つことで相手の話に興味を持って聴いていることを感じてもらえるようにすることが大切です。
  2. 問いかけ

    相槌だけでは本当に聴いてもらえているのか、相手は不安を感じてきます。相手の話している重要なことについては、「それはこのようなことを言っているのか」を確認するための問いかけや「自分自身はこのように感じたがそれは正しいのか」などの問いかけが大切になります。これにより相手は更に聞いてもらえていることを感じ、こちらは相手の話を正確に理解していくことができます。
  3. 寄り添い

    トラブル対応などで多いことですが、相手が混乱をしており一方的にまくしたてられることがあります。トラブル時の多くでとられるのがとりあえず謝るという態度になりますが、これは相手から信頼を得られなくなっていきます。このような場合は相手の立場に立ち、相手の感情を受け入れて対応をしようとしていることを感じてもらえるようにすることが大切です。自分が相手と同じ目線で事に当たっていることが伝わる対応を取ることで、信頼関係を作っていくことができます。
  4. 明確化

    相手の表現がよくわからない、あるいは相手が適切な言葉が思い浮かばない場合に的確な表現にしてあげることで相手の考えを明確化してあげます。これの良い点は、相手はそれにより今までの表現や伝え方を再考し、気づきが得られることです。そして此方は、相手のはっきりしていない表現を放置せず、それが何を意味しているのかを的確に把握することができ、コミュニケーションロスを避けることができます。
  5. オープンクエスチョン

    相手の表現がはっきりせず、此方も的確な表現が不明な場合には、此方がわからない部分に関して質問により掘り下げます。この時にYes/No質問ではなく「これはどういうことでしょうか」といった、オープンクエスチョンで行います。それにより相手からより多くの情報を得ることができます。
  6. 沈黙の打破

    画面越しでの沈黙は耐え難いものです。相手が多くを語らない場合には、仮定場面を設定してそれに関する質問や考えを聞いたりすることで、相手から情報を得るためのコミュニケーションツールを準備しておくことが大切です。こうした準備を多くしておくことで相手の興味あるものを見つけられ、コミュニケーションが進み、信頼関係を築いていくことができます。ただし相手が熟慮している時には沈黙を破らないようにすることが大切です。そのような場合は、口を開いた時に重要なことを話す場合が多いので、相手の頭の整理を邪魔しないようにしましょう。
     

アクティブリスニングだけでうまくいくのか?

アクティブリスニングは相手に積極的に聴いていることを印象付けることにより、相手から情報を聞き出すことが目的になります。
しかし実際の営業現場で相手が多くのことを話してくれるケースはほとんどありません。

それは相手が多くを話しても良いと思う信頼感を持っていないからです。

信頼感を持ってもらうためのアクティブリスニングが信頼感を持ってもらえていないことからうまく機能しない、堂々巡りのように感じられたかもしれませんが、そこが信頼感を得る難しさになります。

面談の流れが重要

面談の機会を得てリモートで初めて会った相手に皆さんはどのように進めるでしょうか?

まずは自己紹介を行い、コンタクトしてきた経緯や問い合わせ内容を確認して、自社が提供できる商品の紹介とソリューションの説明をできるだけインタラクティブに行う、このように進めているのが一般的ではないでしょうか。

Beforeコロナであればこれでもいいですが、リモート面談で信頼確立が難しい環境下にあるWithコロナではこの方法ではうまくいきません。

下手をするとこの時点でロストが確定するかもしれません。

なぜ、このアプローチではうまくいかないのか?

それは顧客の選択肢を狭める質問から入っているからです。

例えばあなたがWEBSEO対策のソリューションを販売しているとします。
そして顧客から問い合わせがあり、自己紹介も終わり最初の質問でこのような質問から入ったとします。

「なぜ、今回、SEO対策を強化しようと考えられたのですか?」

ここまで限定的でないとしても以下のような入り方はどうでしょうか。

WEBに関して何か課題をお持ちなのでしょうか?」

この質問の入り方の何が間違いなんだと思われている方も多いかもしれません。
しかしこの入り方は明らかに間違いです。

この質問は、課題をクローズした入り方をしているからです。

課題をクローズしているとは

二つの質問は、SEOWEBに限定し、それについて聞いています。
そのように質問をしてしまうと相手は、それに関する回答をすることになります。

顧客がコンタクトしてきたのは自社の抱える課題を解決したいと考えてのことです。
SEOWEBでその課題が解決できるかもしれないと考え、御社に行きついています。

そのため顧客がまず話して理解をしてもらいたいことは、課題が何かになります。

必要なのはできる限りのオープンクエスチョン

最初の導入部分は、できる限りオープンにすることが大切です。

例えば先ほどの例では、

自分「どのような経緯で弊社にコンタクトをされたのでしょうか?」
顧客「WEBに問題があると感じたからです。」
自分「WEBに問題があると思われたのは、どうしてでしょうか?」

なんだ、結局WEBの問題を聞くことになってさっきと変わらないと思われたらそれは間違いです。

大切なのは顧客が行き着いた経緯

顧客は何らかの課題を抱えており、それを解決するための手法をインターネットなどで検索してコンタクトをしてきます。

そのため問題として認識した経緯やその問題を解決する課題などは顧客なりに整理を行い、代替案を含めた解決策と思われるものを描いてコンタクトしてきます。

顧客は整理ができているが自分は理解ができていない、この状況下でいきなり自社の商品につながる質問から入り進めていくと顧客とのズレが生じ、顧客からの信頼感を得られなくなります。

そのズレが生じないようにするために顧客の考えをできる限り理解することを目的として、先ほどの質問から入っています。

 

もう一度見てみるとまずい質問では、

自分「WEBに関して何か課題をお持ちなのでしょうか?」

顧客は課題に関して説明に入る。しかしもう少し課題に行き着いた過程を聞きたいと考えあなたは、なぜ、これが課題と感じたのかと質問したとしても相手はWEBありきの説明となってしまう。なぜならばWEBに関して問われていたため、そこから外れた回答は望まれていないという認知バイアスがかかり、WEBありきの回答となる。そうすると此方は顧客はWEBで解決することを望んでいると誤った判断を行い、顧客とのズレが広がり、信頼感を得られなくなる可能性が高くなる。

 

できる限りのオープンクエスチョンでは、

自分「どのような経緯で弊社にコンタクトをされたのでしょうか?」
顧客「WEBに問題があると感じたからです。」
自分「WEBに問題があると思われたのは、どうしてでしょうか?」

この流れであれば問題に焦点が当たっているためまず問題は何かを説明しその上でそれがWEBの問題があることを顧客は説明する流れになる。
そうするとそこまでの過程と顧客の判断を知ることができ、そこからのコミュニケーションとなり、信頼感を構築できるコミュニケーションをとることが可能となる。

このような違いが出てきます。

質問話法を身に着けるのであればSPIN話法

そして質問についてはSPIN話法を身に着けることをお勧めします。
SPIN話法とは

SSituation Question状況質問

PProblem Question問題質問

IImplication Question示唆質問

NNeed-payoff Question解決質問

これらの質問を行うことで顧客自らが解決すべき課題にあなたの商品の価値や有益性に導くことができる営業技術になります。

この質問話法の良いところは、顧客を知り、顧客に考えさせるためにどのような質問で組み立てていくべきかを論理的に説明していることです。

弊社もSPIN話法に関する研修を提供していますので、ご興味があればこちらより問い合わせをしてください。

顧客からの信頼を得るために

信頼を得るために重要な要素は、傾聴と質問になります。

そしてこれら二つが重要であるのは、顧客を知るために必要な技術であるからです。

顧客は相手が自分を理解してくれていると感じることで信頼し始めます。

そのために必要な技術がこの二つですが、それ以上に顧客を知りたい、理解して課題を解決したいと思い活動することが営業には必要です。

そのような意識を持ち顧客をより深く知ろうと思えば、技術は後からついてくると思います。

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