経営者が解決したい法人営業課題:第4回 顧客情報や商談情報をデータ化して共有

2020. 06. 01

経営層が顧客情報や商談情報を管理、共有する目的には二つあると考えられます。


一つは、精度高い売上予測をするためです。
売上予測は、精度が高ければ高いほど価値があります。
そしてその精度が来月、再来月のレベルではなく、半年先や1年先など、期間を長く精度高い予測ができるほど、価値が上がってきます。

二つ目は、商談の成約確度を上げるために必要な活動を導き出すために商談の状況共有です。。
状況共有すると組織内で抜けていた活動やリスクが見えるようになり、商談のリスクを少なくする対策を見つけ、敗退を少なくする効果が狙えます。それと確度の低い商談についてもアドバイスやアイデアを出すことで、成約確度を上げていくことも可能となります。


しかしSFAやCRMを導入しデータ化しているが、経営層が狙ったこれらの効果が出ていないのが実情です。


その原因は、営業が入力していないことだとよく言われます。
果たしてそうでしょうか?


実は、管理している商談情報が成約に活かせないことが原因であると弊社は考えています。
今回は、今の商談管理の何が問題で、どのような解決が必要なのかを考察したいと思います。

商談情報が成約に活かせない理由

SFAもしくはExcelなど何らかのツールを使い、商談情報は管理されていると思います。
実際に商談情報には、以下のような項目を入力して管理しているのではないでしょうか。
案件名、顧客名、販売ルート(パートナー)、商談プロセス(課題ヒアリングなど営業プロセスの入力)、売上予測(売上確度の入力)、提案プロダクト、数量、金額、受注予定日、担当営業、作成日、活動履歴
そして活動履歴には、コンタクト日、面談者、商談内容、次回のアクション(目的と予定日)
このような内容を日々の活動結果から更新を行い、上司あるいは各部門に共有をしているのではないでしょうか。


しかしこの情報から得られる事実は何でしょうか?
長く付き合いのある既存顧客の商談であれば上司は、この内容からうまく商談が進んでいるなど状況を想像できるのかもしれません。
しかし新規顧客であればどうでしょうか。
顧客のことを十分に理解していないため、このレポートだけではわからないのではないでしょうか。


判断できないから担当営業に商談について聞くことになる。
しかし商談の状況、リスクを確実に把握するためのポイントが決まっていない。
そうなると結局は先週との差異を確認するための状況説明をさせ、説明で不明なことを質問攻めすることになる。
これが毎回繰り返されることで、担当営業からすると商談情報を入力していようがいまいが、聞かれることが同じになるため入力する意味がない。
だから最低限のことしか入力しなくなる。
このような感じになっている企業が多いのではないでしょうか。

今の商談情報は、「売れそうな商談がいくらあるか」「その商談はいつ、売れるか」
それを担当営業の主観で報告し、管理者層はその内容が自分も納得するものかどうかを確認するためのツールになっています。
そして入力したものだけでは判断できないため、結局のところ詳細の報告をしなければいけない、担当者には負荷だけが高いツールになっています。

ではどうすれば、この状況を解決できるのでしょうか。

売上予測を営業はどのようにして行っているか?

以下ような商談を経験したことはありませんか?

自社の商品購入について社長も承諾しているので確実ですと報告を受けていたが、競合が成約した。

部下の報告は嘘だったのか、競合が何か裏技を使ったのか、成約できると思った商談が敗退してしまう、このような経験をしたことはありませんでしょうか。

図1-5これは営業が、その人の役職から影響力を推し量ることにより起こります。

つまり影響力が高い人がYesと言えば成約するという思考で判断しているのですが、この商談でその人が影響力が高いのかを思い込みで見極めていることが原因です。

今回の場合は、社長は会社の中で一番の影響力を持っている人だという思い込みによる判断ミスです。

しかしできる営業は、今回の案件で誰が一番影響力を持っているかを確認し、本当にその人に影響力があるのかの裏付けを取ることで客観的な判断を行うようにしています。
主観ではなく、客観的な判断が重要なのです。

問題が理解できたと思いますが、売上予測に対する明確な判断基準を持ち、その判断基準が客観性をもって確認されて報告される仕組みを持たないと、使えないツールになってしまいます。

使える仕組みにするために最初に取り組むこと

成約するための条件を設定し、その条件のうち達成できているものは何で、達成できていないものは何かを把握する。
これらが案件情報で管理できれば、成約の判断が客観的にでき、売上予測の精度を高めていくことができます。

本来は、成約するための条件を洗い出す作業を行い、成約に向けた最短ルートの作成を行うことをお勧めしますが、取り組み方を理解していないと難しいので他の方法を紹介させてもらいます。

それは、営業が抱えている商談からの条件抽出方法です。
営業が今、進めている商談があると思います。
各営業にいくつかの商談を選択してもらい、その商談の売上予測を確実、大丈夫、心配、不安の4つに分けてもらいます。
そしてそれぞれの商談がその状態にある理由をポストイットなどに書き出してもらうのです。

図2-1例えば、
キーマンが押してくれている
我が社を押してくれる人がいない
競合が価格で有利
競合がニーズを満たしていない
最終決定者の一人が我が社を推奨している
など、思いつく限り出させます。

その出てきたものを売上予測ごとに分類していきます。

大丈夫の商談では、価格有利が多い、最終決定者に確認できている商談が少ない、心配には競合が価格で有利が多い、自社がニーズを満たせていないが多いなど、状況により感じていることの傾向が出てきます。

その傾向から、担当営業が重視しているのはどのような指標でその重みづけが見えてきます。
営業が判断している指標は正しいものか、判断に利用している指標は必要十分か、今まで見えなかった営業個人の判断基準から必要な指標を導き出すのに役立ちます。

この抽出された指標から売上予測として活用すべきものを選択し、管理者として足りないと考えるものを追加し、売上予測に影響を与える指標を作成します。
そして営業組織内で作成した指標を達成することが、商談を確実に成約するために必要な項目であることを合意するのです。

合意できれば後は商談管理で各項目が達成されているかどうかの選択式の仕組み化を行います。
選択による入力になるため、担当営業の負荷は大きくありません。
そして売上予測の理由が明確なため、上司との確認作業もスムーズになります。
重要な指標については、どのような客観的判断をしたのかを聞き、客観性が低いと判断すれば再確認を指示して報告をもらいます。

この報告でPDCAを廻していき、売上予測に関係する指標の追加・削除と予測に大きく影響する指標が何かを見つけ、精度を上げていく活動を繰り返します。

指標の精度が上がればそれが成約条件になっていき、成約するために優先すべき目標が明確になっていきます。

見える化の次は、戦略立案

売上予測の見える化により、担当営業の心配事を把握する仕組みは作れました。
しかしこれは経営層が喜ぶものでまだ、入力のためのインセンティブまでにはなりません。

その心配事をベースにマネジメント層が、解決を手助けするための戦略を提供してあげられるかが重要になります。

しかし顧客ごとの成約のための戦略立案には、この情報だけでは足りません。
組織図から始まり、購買参加者の部署や役職、承認プロセスなど、多くの必要な情報があります。

戦略を立てるためには先ほどの指標に追加する情報は何か、それを整理し担当者と戦略立案ができる、そこまで仕組み化できるかが使われるためのポイントになります。

顧客情報や商談情報をデータ化し共有することが、経営側の数字把握や将来の商談のためだけではなく、今動いている商談の成約に役立つ、それを作り出すことが意味あるデータの共有が行われる要因となります。

まとめ

成功体験の情報が多数発表されているため、自社の運用方法を作らずにSFAを導入し、使いこなせていない企業が多いのが現状です。

報告のためではなく成長していくために必要なことは何か、現場をより理解するために必要なことは何かなど、こうしたことを日々の営業活動から見出し、打ち手を実行するためには、戦略があり、その戦略を実行している基盤がなければできません。

特に日本企業は、フィールドセールスが持つべき顧客に販売する「成約するための戦略」を構築しているところはほとんどなく、成約に向けた活動を個人のスキルに依存しています。
商談を成約するための戦略がないことが原因となっている課題が多いように感じているのは弊社だけでしょうか。

真の決裁権を持つ人へアプローチをするための方法は
新規顧客のセールスで不確実性を排除し、活動するための方法は
自社への反対勢力を味方にするための方法は
財務決裁者に会うための方法は、会えない場合の対処法は

ほんの一部ですが成約を高めるためには、このような問題を乗り越えて進む戦術が必要になります。

その戦術を効果的に活用できるようにするために「成約するための戦略」がなくてはならないのです。

このような戦略を持った営業組織は、強い営業組織になります。

 

もう少し詳細にお聞きになりたい場合は、遠慮なく無料相談にて連絡いただければと思います。

目次