経営者が解決したい法人営業課題:最終回その1 Withコロナ時の見込み客開拓

2020. 07. 14

これまで8回にわたり、経営者や営業管理職がコロナ以前に課題として取り上げられていたことに関して考えてきました。

しかしWithコロナ、Afterコロナ化ではこれらの課題以前の問題がクローズアップされていると思います。

そこで最終回は二回に分け、弊社に相談が多い見込み客不足とクロージングに関してどのようなアドバイスをしているかを伝えたいと思います。

減少する見込み客

弊社に相談が多いほとんどの企業はマーケティング部門を持っておらず、営業部門主体で展示会やセミナーを行うことで見込み客の開拓を行っていました。

しかし緊急事態宣言以降、展示会やセミナーが行えなくなり、新規見込み客の開拓が進まない状況に置かれています。

その後、緊急事態宣言が解除となりセミナーは開催できるようになりましたが、感染リスクによるセミナー集客が難しく、非対面での営業活動や投資への再考による商談消失などから、従来のように見込み客開拓ができないことが課題となっています。

このコラムを読まれている方も同様な悩みを持たれているのではないでしょうか。

Web集客が最善策か?

マーケティング機能を持っていなかったことから自社のHPが見込み客集客を狙ったものでないこともあり、「Webを充実させMAなどによる見込み客の情報取得や育成をしたいと思うが、考えを教えてもらえないか」と最初に相談されます。

私が外資系経験者であるため、このあたりの知識を持っているであろうということからの相談です。

その場合に最初に聞くのは、セミナーや展示会などで全くコンタクトの無い顧客から電話の問い合わせがあり、商談に繋がった顧客がどれぐらいあるかをお聞きしています。

ほとんどないと答えられるのが100%です。

そのためWeb経由での見込み客開拓を実行する前に以下のことを実施することをお勧めしています。

2008年リーマンショック時の経験

まず話をさせていただくのが、2008年のリーマンショック時の対応についてです。
今回と2008年では景気減速の原因は全く違いますが、当時も企業は投資を減速しており、展示会やセミナーを実施しても人は集まらず、見込み客はほとんどありませんでした。

進んでいた商談もストップがかかり急激に売上げが下がる中、見込み客を発掘するために過去の名刺をフル活用してコンタクトし、少しでも可能性あるところを探す活動をさせるか、それともそれ以外に何か良い方法があるかと最初はそればかりを考えていた記憶があります。

しかし、ふと思ったことがあります。

これは顧客の問題を考えての行動ではなく、単なる自分たちの課題を解決するための行動ではないか。

この不況の中、影響を受けずにビジネスができている企業もあるだろうが、そうではない企業がほとんどではないか。まずは正確な外部環境を知ることから開始すべきではないか。

そのように考えたのです。

見込み客獲得のための3ステップ

この話をさせていただいた後、以下の順番で考えてみてはどうかと伝えています。

  1. 製品ポートフォリオ別・業種別既存顧客状況把握
  2. 収集した情報をベースに見込み客開拓計画
  3. 起こっている変化を捉え、予測し、準備する

製品ポートフォリオ別・業種別既存顧客状況把握

外部環境がどう変化しているか、顕在化している部分だけではなく潜在化している部分まで把握するためには、既存顧客から聞くのが一番です。

その時にポートフォリオ別・業種別に見ていきたいのですが、確認するべきことは二点あります。

一つは、今回の環境変化で自社の商品サービスの良かった点と改善したい点は何かを聞く。これについては社内で仮説が立てられると思いますのでその仮説をもって確認を取ります。

仮説をもって確認してもらいたいのには、できる限り深掘りして聞き出してほしいからです。

良かった点は何ですかのようなオープンクエスチョンでは相手から深く聞き出すことは難しくなります。

「弊社では今回、このような部分が評価いただけたのではないかと思いますが、実際はいかがでしたでしょうか?」と具体的な確認をすることでYes or Noの確認とそれに続いて何故かを深掘りしていくことができます。
改善したい部分も同じように具体的に聞かせてもらいます。

そしてその深掘りにより想定していなかった気づき情報が得られ、顧客維持や新規顧客開拓のヒントになるものが見つかる可能性があります。

またこの時に、顧客内の一人から聞くのではなく、色々な役職や部門の方から情報を収集することが大切です。立場が変わると考えていること、見ていることが違うため、より多くの気づき情報を収集することで思わぬヒントが見つかる可能性があります。

こうした情報収集をするためには、顧客の変化に対する想像力を膨らまし、顧客心理の変化を感じとる意識を持つことが必要になります。
営業担当者が取得したどんな些細な情報でも何故かと考える、そうした会社の姿勢が大切になってきます。

二つ目は聴き取り難い情報と思うかもしれませんが、投資を再開できるのはどのような状況になった時で、製品・サービスを導入する際に重視する選定ポイントは何かです。長引く景気後退を想定して価格と言われることがほとんどだと思いますが、そのために何を捨て、何を加えたいのかを確認することです。

今回のことにより顧客の心理は変化し、今後のビジネスについて不確かながら予測をしています。その予測から従来のやり方から変える必要があると考えているものがあります。
まだ考え切れていない顧客も多いかもしれませんが、今だからこそ出てくる返事もあるので聞くように営業へ指示してください。

顧客も経済的に傷んでいる可能性が高いため事前に営業部内で検討し、失礼に当たらない質問方法や会話の導入部分などをマニュアル化して実施するとよいでしょう。

まずはこれらの情報を集め、対応できるところは対応し、顧客に寄り添い、変わるべきことは何か、これから必要になってくることは何かを知ることから始めます。

顧客から言われてから変わるのではなく、顧客のために将来を見据えて変わる、そのための活動を営業部門が意識して実行することから営業活動を開始します。

収集した情報をベースに見込み客開拓計画を立案

既存顧客からの情報を基に、力を入れる業種/製品はどれか、控えるべき業種/製品は何かが把握できているかと思います。しかしほとんどの部分で攻めに移行できない、その時にどうするかです。

この時に考えるべきことは、顧客が動き始めたときに自社に声がかかる仕組みを作っておくことです。
その仕組みを作るときに重要になるのが、誰の目に留まるかを考えて作ることです。

できれば検討のトリガーをかける部門、そしてその部門内のキーとなる人が目に留めて声をかけてもらえれば最高です。
その人に声掛けしてもらうための導線を考え計画します。

ここで役に立つのが先ほどの既存顧客からの情報です。

見込み客に対して従来のように定期的に訪問し、状況を確認する活動はほぼ不可能です。
非対面が常態化した今、どのようにして検討を進めるのか、どのように情報を収集したいと思うのか、Webでどこまでの情報を収集するのか、既存顧客から情報を得ておきます。

Web上で必要な情報を収集しベンダーを決めたうえで営業に声をかける、これが今の常識ですが、それが自社にはどのレベルの検討まで当てはまるのか、Withコロナによりそれはどうなるのか、検討時の感染リスクを削減するために何をしておく必要があるのか、考えておくべきことはたくさんあります。
まだ検討が開始していないのでわからないと答えるかもしれませんが、何かしらの考えが聞けると思います。それを聞きましょう。

またターゲット顧客によってはDMも馬鹿にできません。
IT企業での経験が長いですがターゲット人物へのリーチのために、DMを活用したことが多々あります。
定期的にDMを送り、ターゲットにあったメッセージを発信し続けることで、記憶に残り、声をかけてもらえる確度が高くなるからです。
特に今までと違うターゲットにリーチする際には有効です。

自分たちのターゲットが検討時にどのように動くのかを想定し、顧客検討開始を捉える戦略と商談を進めるための戦略を立て、計画準備をしておけば、再開時にすぐに動くことができます。

起こっている変化を捉え、予測し、準備する

2年かかる変化が2カ月で起こったといわれるように、想像を超えた変化が起こりました。
そしてこの変化の行き着く先はどこになるのか、それはまだわかりません。

ただ言えることは、変化を意識して捉えることと捉えた変化に逆らわないことです。

守秘義務にかかるため具体的なことを語るわけにはいきませんが、リモートワークが常態化することで、全く関係ないと思われていた事業の変化が余儀なくされる予兆を捉え、それを新たな事業戦略として計画している事例があります。

捉えたのは、リモートワークで出社しなくなったことが起因となる取引先の顧客減とその減少した顧客の新たな需要です。リモートワークにより出社の必要性がなくなったことによる想定される需要ですが、これが将来の大きな需要変化につながる可能性があるとみています。

こうした新しいビジネスが発見できたのには、理由があります。
それは既存顧客からの情報収集の際に、顧客の顧客がどのように変化しているのかを確認するように指示していたことです。
先ほどの事例も顧客の顧客がどのような変化をしているのかを確認していた中で得た、気づきでした。
意識をしていなければ単に需要が減少しているという情報ですが、顧客と何故減少しているのかを考えたことから出てきた仮説になります。

捉えた変化はまだ小さいかもしれませんが、時間とともに大きくなっていくかもしれません。どんなに小さな変化も見逃さず、拾うことが大切です。

そして管理者層はその情報を使い、未来を予測あるいは妄想することが必要になります。

営業組織内で捉えた変化から起こりうる変化を共有することで、営業一人一人が顧客にそれとなく確認することができます。

変化を予測し準備を怠らないことが生き残っていくためには必要であり、そのためには最前線の営業が収集した生の声が大切になります。

まとめ

リーマンショック時もそうでしたが、まずは既存顧客を守り、既存顧客の変化を捉えることが大切です。

全てはここからになります。

そして見込み客の開拓ですが、変化に逆らわず、準備して待つことです。
もちろん新たな市場の開拓に力を入れるなと言っているわけではありません。

あまりにも外部環境変化が大きいため、何が新しい常態化なのかが誰にもわからない、そのような時には焦らずに想定できる変化に必要な準備をしておき、少ないチャンスを捕まえる準備をすることだと思います。

そして準備をしチャンスを掴むためには、「変化を捉える力」と「予測する力」のために必要な既存顧客からの生の情報を取得し活用しようというトップからの指示が必要になります。

生き残るためにはまずは既存顧客からの生の情報です。

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